「んです」のおかしな使い方の例として、私のこんな体験を。
海外の授業で、ビデオを使っていたとき、理事長 (日本の方ではない) がやってきて、開口一番「もうちょっと音を下げてくださいませんか。うるさいんですから」とお願いに来ました。
理事長は、穏やかなもの言いをする方でしたが、このときの言い方が妙にひっかかりました。
専門書にはよく、「んです。」=「説明のムード」の現れ、などと書かれています。
『中級へ行こう』というテキスト第7課「リサイクルとフリーマーケット」という読解ページに、こんなくだりがあります。
以前は古くなったり、壊れたりしたものはすぐ捨てたものだ。しかし、今はできるだけ大切に使おうという考えに変わってきた。このようなリサイクル運動のひとつとしてフリーマーケットがある。使わなくなった物や着られなくなった服を公園などで売るのだ。…
日本の方ならわかることことだと思いますが、敢えて分析すると、この「使わなくなった物や着られなくなった服を公園などで売るのだ」は、まさにフリーマーケットが何なのか、どんなものなのかという、説明になっています。
そうやって考えていくと、「んです。」というものの言い方もどんなとき使う・使わないというのがだんだんはっきりしてくるのではないかと思います。
「財布を落としました」と「財布を落としたんです」の違い。
「旅行に行きます」と「旅行に行くんです」の違い。
「お金がありません」と「お金がないんです」の違い。
「〜んです。」は、必ず相手がいることを前提に「〜です/ます。だから、…」のようにプラスの説明を要するときに使われていると考えられます。
例えば「財布を落としました」。これは報告、または日記などでモノローグ的に書き留めておくようなときなどに使っています。
「財布を落としたんです」は駅で、交番で、学校で、誰かに伝えて「だから、助けてほしい」「だから、ここへ来た」、そういうプラスの気持ち、状況を説明したいという気持ちが含まれているように思います。
そのため、「んですから」と言うと余計に強調されてしまい、冒頭の話のように誰かにお願いするときの理由として使うと、嫌な感じを与えてしまうのではないでしょうか。
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