何年か日本語教師をやっていると、学習者 (相手は「学生」だけではなく、ビジネスマンなど色々な方がいるので、こう呼びます) からクリスマスカードや年賀状をいただくようになります。
写真は、私にとって最初の学生から届いた年賀状。日本へ留学した彼は、いろいろなトラブルに遭い、その結果、事件を犯してしまいました。彼と最後に会ったのは数年前、八王子拘置所で。ドラマさながらの透明のパネルを1枚隔てて、警備の人が見ているそばで10分くらいお話ししたのを覚えています。その後、彼は度々手紙をくれました。そして「反省しても反省しても足りない。自分は死をもって罪を償うつもりです。でも、そう覚悟すると今度は悪夢に悩まされる。…」と、告白してくれました。
拘置所で読めるような本を届けようと2回目にそこを訪れたのが、確か4年前の春。警備員に「彼はついさっき、府中に移送されたよ」と言われたときのショックを、今でも忘れることができません。それ以来、彼がどうなったか、知りたいと思いつつ、知るのが怖い…そんなふうに、もやもやとした気持ちがつねに胸中にありました。
実は、私が日本語教師をやめずに続けているのは、そんな彼のことがあるからです。
人が異文化に接触したとき、大きく分けて4つの「波」が来るという説があります。はじめは、「すべてが新鮮で、楽しくてしかたがない」時期(気分上 々、ハネムーン期)、それが過ぎると、その国の悪いところが目につきはじめ、自分の文化と比較するような時期(気分後退)…のように。こういう変化はごく 自然なことです。しかし、この波にうまく乗れなかったり、対処できなかったりすると、精神を病んだり、思いもよらぬトラブルへ巻き込まれてしまうことがあ ります。
だから、彼のような若者がもう2度と出ないように、微力でも何でも、接 した学生には本気で向き合うようにしています。学校という「機関」では対応できる時間が限られているので、トラブル覚悟で、個人のケータイ番号も教えるよ うになりました。「そんなの、何かあったって相手はもう大人なんだから、放っておけば?」という意見もあります。でも、困っている人を見ると助けずにはい られない、それが、私だったりします。
今年、彼から数年ぶりにもらった便りが、この年賀状でした。住所をyahooで検索したら、出てきた地図上には「府中刑務所」の文字が。これはこれで、「あぁ…、」とやっぱりショックでしたが、生きていてくれて、ヨカッタ。これが本音です。
話は逸れますが、年末に迷い込んできて、庭先に住みついた子猫がいます。すごく気が荒くてなかなかなつかないのですが、昨日、外出から帰って来たら、のど を血まみれにしてぐったりしていたので、慌てて病院に連れて行きました。この子もまた、私に「命」ってやつを教えてくれています。がんばれ、もんく!(ク リックで拡大)
もんく、大丈夫でしたか?
caraghさんのこと、刑務所の中の彼もずっと気にしていたんでしょうね。
今年は私ももう少し深く彼らと接していこうと思います。
投稿情報: なおっちゃん | 2007年1 月 6日 (土) 23:18
>なおっちゃんさん
コメントありがとうございます。にゃこは自力でゴハンは食べられるのですが、片目は白目だし(猫は体調が悪いと、白い膜が出てしまうそう)、傷も相当深かったようで、よく痙攣しています。痛いから眠るのもままならないみたいで、見ていて正直かわいそうになります。でも、あんなに警戒してフーフー火を吹いていたのに、今日タオルを替えるのに箱から出したとき、よろよろしながらもそばへ来てスリスリしてくれました(号泣)。
元学生の彼には、勇気を出して会いに行ってみようと思います。ほんと、人相手の仕事って色々なことがありますねー。
投稿情報: caragh | 2007年1 月 7日 (日) 01:42