「物語だと思わなければ、人生なんてつらすぎるわ」
この言葉に惹かれて、行ってきました。
舞台は70年代のアイルランド北部 (*) と、ロンドン。
物語は女装した主人公、キトゥンが乳母車を押し歩くシーンから始まります。そしてありったけの「自分らしさ」を開花させ、彼 (彼女?) が「幻の女」と同時に探し求める「自分の居場所」。いつだってそのために人とぶつかったり、裏切られたり、キトゥンの行く手にはこれでもか、とばかりに度重なる困難が。でも、悲しいことの次に来るのは、幸せしかない。前に進まなければ、何も始まらない。そこには映画も現実もないのです。そんなことに気付いた瞬間、私がキトゥンに、キトゥンが私になる不思議な感覚に。
映画でありながら、おとぎ話のようでありながら、実はとってもリアル。そんな作品です。
冒頭で使われた音楽、The Rubettes のSugar Baby Love
(名前でわからなくても、聞いたことあるはず! )がラストシーンで再び流れる時は、旅の終わり、そして新たな旅の始まりを予感させます。
自分が自分らしくあるために、変えなければならないものなんて、何もない。あなたもキトゥンと、自分探しにでかけませんか。
「人生に輝きを与えてあげないと。誰だって輝きを求めているもの」
また、自分の境遇や親友の死など、普通なら悲しい、辛いと思うことに魔法をかけて(時にブラックな)笑いに包んでしまう主人公の生き方は、まるでアイルランドという国そのもの。これは印象的でした。
学校のシーンで先生が作文の題材の例としてイースター蜂起を出したり、デリーの事件が話題に登場するなど、アイルランド近現代史を知らないと理解しがたい部分もあります。しかしIRAやテロはあくまでも映画の一要素として描かれているにすぎません。予告編から受ける暗いイメージとは反対に、むしろ60's-70'sテイストにあふれたファ ンタジックな映画です。
キトゥンの身につけていた立ち襟のレザーコート、ボウタイのついたラメニット、真っ赤なプラットフォームシューズにレトロなスーツケース…。ファッションも古着好
きなら真似したくなる着こなしがいっぱい
(学校の制服をあんな風に飾ってしまうなんて!)。ライブ会場でポカホンタスに扮したキトゥン、それにブランコをこぐキトゥンの愛らしさは、必見。
「キリアン・ラブリー」に改名すべき!(**)
(Click!)
*:実際の撮影地はCo. Kilkenny、Callan。
**:俳優の名前はキリアン・マーフィー。
『プルートで朝食を』予告 (RealPlayerが必要デス)
『プルートで朝食を』公式ページ (日本版) はこちら。
遊び心たっぷり、仕掛けいっぱい。音楽の試聴サービスもl充実!
『Breakfast on Pluto』公式ページ (英国版) はこちら。
映画は原作を思わせる、物語仕立てになっています。
1章から36章までの各タイトルは下記反転を↓。
「私の人生の物語」
第1章 私は捨てられる
第2章 母の靴
第3章 紹介:友人たち
第4章 紹介:母さん
第5章 紹介:父さん
第6章 私は過ちから生まれた子
第7章 聖キトゥン
第8章 ダンスのお金
第9章 星のハイウェイ
第10章 変化
第11章 紹介:モホークス
第12章 私のショウビズキャリア
第13章 秘密の場所
第14章 とてもとても真剣
第15章 深い湖
第16章 私の領分じゃない
第17章 報復
第18章 闘争で荒れるアイルランドを去り…大海原を越える
第19章 あなたの住む街角?
第20章 おとぎ話
第21章 香水
第22章 キトゥン、希望を見つける
第23章 私のショウビズキャリア その2
第24章 幻の女
第25章 革命
第26章 中絶
第27章 私のタイツがズタズタ!
第28章 キトゥン、世界を救う
第29章 私のステキな狭い独房
第30章 愛とはかくも素晴らしいもの
第31章 5人の優しい女たち
第32章 あなたが本当に住む街角で
第33章 じっとしていて、私のかわいい人
第34章 交通整理のおばさん
第35章 クリスマス・イブ
第36章 体が引き裂かれそう!
この映画については、「アイリッシュ・ネットワーク・ジャパン」サイト内、シャノキー (語り部) コーナーにも寄稿しました。
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