今日は昨日とうってかわって、朝から目眩するほど青空がまぶしい。
【孔子廟】
朝ごはんも食べないまま、地下鉄に乗る。今日は終日、市内をめぐってみよう。
まず行ったのは孔子廟。そう、あの有名な「孔子」を祀った場所で、学業なんかにご利益があるんだそうだ。朝9時とはいえ暑く、太陽が容赦なく照りつける。途中のスーパーで買った豆乳を飲みのみ歩く。病的なほどの方向音痴の私だけど、迷わずたどり着けるかなあ。
…と心配したけれど、駅からは大通りをひたすら歩くだけ。途中一度曲がるくらいで、ここを目指す人も多く、とてもわかりやすい場所にあった。
人はまばらで、みんな思いおもいにおしゃべりしたり木陰で休んだりしている。一度だけ日本人のツアー客を見かけたが、それ以外は本当に静かでとてもリラックスできるところ。ぐぐぐと伸びた椰子の木が南国っぽくて、良い。
孔子廟の雰囲気に酔いしれたあと、朝からまだ食事らしい食事をしていないことに気付かされた。おこわのような懐かしい香りがどこからともなく漂ってきたのだ。見ると、ステンレスのぴかぴか光る台の向こうでおじちゃんがお櫃をぐるんぐるんかき回している。おじちゃんの頭上には勢いの良い字で、「油飯」。
ぬをー。これ、食べたい!
地元の人が買うのを見ていたら、卵をつけるとか、つけないとかやっていて、何だかよくわからなかったけどとりあえず節約しないといけないし、で、お茶碗一杯分の「油飯」をいただく。もしメガネをかけていたら、あっという間にくもってしまうほどの湯気がほかほか立ちのぼり、それとともに甘いような、しょっぱいような香ばしい香りが鼻の奥まで入ってくる。本当に、数十円程度だったけど、美味しかったー!
(ちなみに、以後度々市内の夜市などでもいただいたが、ここに勝るところはない!)
【台北市立美術館】Taipei Fine Arts Museum
次に目指したのは、「台北市立美術館」。地図上では孔子廟からすぐのように見え、間にあるだだっ広い公園を突っ切って徒歩10分の距離…のはずが、暑くて暑くて、歩けども歩けどもその距離が変わらないように感じた。所々に立っている木も、正午を回ると日陰を作らないのだ。頭の天辺がじりじりするのを必至で帽子で防いでたどり着いたときは本当に嬉しかった!
コンクリートの大きな箱に、小箱をくっつけたようなモダンな建築が印象的で、是非足を運びたいと思っていた美術館。日本統治以後から現代に至るまでの現代美術を眺めていると、それまでの暑さを忘れてしまう。許武勇という画家の回顧展をやっていた。シャガール風のタッチで描かれた台湾の農村や街並みが新鮮。見た目以上に広く、ほかにも色々あったが、特に良かったのは写真。小さいもの、大きいもの、色々あったがやっぱりモノクロは良い。つつがなく、キレがある。
一般30NT
MRT淡水線 圓山駅下車10分
【台北故事館】Taipei Storyhouse
市立美術館のはす向かいにあるのが「台北故事館」。日本統治下の1914年、当時の「茶商」であった陳朝駿がサロンとして、また、その後立法院長であった黄國書が別荘として使うなど数々の変遷ののち2003年に現在のような芸術空間となった。この時は特設展示で任侠劇の人形たちが飾られていた。竹やぶをバックに飾られた人形たち。見ていると、私の頭の中で動きだしストーリーが生まれていく。説明書きがわからなくても想像力で楽しめてしまう自分はこういう時本当に得だと思う(笑)。
ここのミュージアムショップには今どきのオシャレなものが多く、ほかでは見なかったアイテムが手に入るのでおすすめ。日本統治時代の産業地図や広告を使ったレトロなポストカードや、いかにも中華風な派手なテキスタイルのバッグなど、覗くだけでも価値があった。建物の黄色と茶色が、夏の真っ青な空によく映えていた。
30NT
MRT淡水線 圓山駅下車10分
【台北當代藝術館】Museum of Contemporary Art Taipei
その後、MOCA(台北當代藝術館)に繰り出そうと中山駅へ。道がよくわからずしばし彷徨う。たどり着いたそこは、やはり昔の建物を生かして使っており、モダンアートととの融合のさせ方が大変好感が持てる。「巧い」と書いて「にくい」と読ませたくなるような、嫌みのない格好良さがあった。昔の学校のような長い廊下の端に部屋がいくつもあり、そこが展示室になっている。室内の白い壁は涼しげ。ここでも写真展が見られ、多くの参加アーティストの中には日本人女性の名もあった。
ちょっとお高いけど、行く価値あり。
50NT
MRT淡水線 中山駅下車(長安西路3又は4番出口)
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「衣蝶」というデパートに入ってみるが、日本のデパートと何ら変わらずつまらないのでそそくさと出る。愛玉の屋台があったので暑さを忘れるためにも一杯買ってみる。入れてくれたのは愛想の良いおばちゃん。デパートの警備員か清掃員なのか、そばにいたおじさんと話しながら渡してくれたのはいいが、何やらおかしい。お釣りの金額だ。気がついて、立ち去る前にそのことを言うと「何がおかしいのよ」と言われる。そこで「これはいくらなんだ、私はいくら払ったんだ。ちゃんとやってください」と確認、はじめて相手も「堪忍した」様子で足りなかった分を無言で渡してきた。ただでさえ暑いのにこれ以上イライラさせないでおくれー!
遅めのお昼は衣蝶からぐるっとまわったところの歩道橋付近にあった、なんてことのない食堂。その構えからきっと庶民的価格だろうと、ただそれだけで選んだのだけど、正解だった。安い上に美味しい〜。頼んだのは酸辣湯(サンラータン)。野菜がたくさん入っていて幸せ。写真中、赤茶色の長方形のスライスは何かの血を固めたものだと思われる。とろみがついているせいで、いくらフーフーやってもちっとも冷めてくれず、猫舌を苦しませる。でも、おかげでゆっくりできたので足の痛いのがすっかり癒えた。店の子だろうか、店内で宿題か何か算盤を使って勉強しているのを眺めていた。
台北駅の地下を散策。中国大陸もそうだけど、地下がものすごいことになっていた。しぶちかや新宿サブナードなんて目じゃないくらい、延々と店が続くのだ。きっと地上に出ずとも生活しようと思えばできるんだろう。気分は地底人…。店がどこまで続くか、自分の時間とどっちが続くか、思いきって歩いてみることにした。
翡翠や瑪瑙などの玉を売る店、干物を売る店、飲食店街、文房具屋、玩具屋、なんでもあった。そしてやっと終わりが見えたとき、信じられない店を発見した。「メイド喫茶」だ。今でこそ日本では当たり前を通り越してしまったが、2006年夏のこの当時は日本でも話題になったばかりだったのだ。は、早!あとで蔡さんに話したら「恥ずかしい…」と言っていた。
【龍山寺】
その後、MRTに乗って台北を代表する古刹、「龍山寺」へ。駅からのアクセスも良い。突如として現れるその歴史を感じる佇まい、とにかく素晴らしい。逆光のなか、柱や屋根に施された精緻な彫刻がシルエットとなって浮かび上がり、さらに美しさを増している。明るく小気味良い音色にのってお経が流れているのが印象的。
そのまま華西街観光夜市へ足をのばす。日本人向けのガイドブックには「このあたりは昔花街だったので男性向けの店が多く、夜のひとり歩きは避けたほうが無難」とあったが、そういった意味での危険な感じは全くない。ただ、野良犬が多く、かつて旅先で犬に噛まれたことがあるためそっちのほうが怖かった。いわゆるゲテモノ食材を売る店や蛇を裂くパフォーマンスには「お約束」のように欧米系観光客が怯えていた。ここでまた冰をいただく。今回も芒果。美味しいんだな、これが…。
晩ご飯にまた油飯をトライ。お肉の脂がくどくて、やっぱり孔子廟近くのおじさんのところのが美味しかった。
帰りに、駅の近くの八百屋さんで芒果(マンゴー)を2つ買って帰る。お店のお兄ちゃんは、私が日本から来たと知ると大変愛想良く「日本へ行ったことがあるよ!北海道は本当に楽しかった!」と話してくれ、知っている日本語を少し披露してくれた。私もちょっと中国語で話したりして、楽しいひとときだった。ここの店先には、少し濁った水がペットボトルに入れて売られていたので、「これは何?」と聞いたら、野菜(キュウリ?)の絞り汁だと言う。「肌につけると良いんだよ。日本にはないんですか?」と。台湾と日本はよく似ているけど、こういうちょっとした違いを発見するのはやっぱり楽しい。芒果は、明日の朝食べよう。
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